今まで、現代中国語を英語の5文型に倣って分類する試みをしてきましたが、漢文についても5文型に分類する試みをしている方を発見したので、紹介したいと思います!このサイトの作者は残念ながら故人となっているようですが、古き良き時代の漢文教育を受けていたものと思われます。作者の教養の深さが伺われます。きちんと、現代中国語の発音と、繁体字と簡体字、白文と書き下し文との繋がりを含めた総合的な中国語、漢文理解の重要性を述べている点、ピンインまできちんと表記している点は素晴らしいと思います。まずは、兎にも角にも読み応えがあり、見事なので引用をさせて頂きたいと思います。

 

以下漢文入門のサイトから一部引用(※明らかな間違いは本運営者にて修正し、一部文章に補足説明を追加。動詞部分を赤字で表記。形容詞が述語の場合、Be動詞相当するものがないため、緑色で表記。)

 

出典URL http://www.seiwatei.net/kanbun/index.cgi

 

英語では五文型ということがよく云われる。

 

第1文型。SV……主語+動詞
第2文型。SVC……主語+動詞+補語
第3文型。SVO……主語+動詞+目的語
第4文型。SVOO……主語+動詞+間接目的語+直接目的語
第5文型。SVOC……主語+動詞+目的語+補語

 

 つまり、まずは動詞に着目します。動詞の前は主語です。そして動詞のあとに何もないのか、補語や目的語が来るのか、来るとすればそれは1つか2つか、という区別によって文型を五つに分類していくわけです。
 さて、漢文の語順は9割方英語と同じですから、漢文でも五文型という分類をやろうと思えばできます。もっとも漢文の場合、目的語と補語との区別がありませんので上記2と3、4と5をまとめることができ、これで三文型。ですがせっかく五文型という言い方が英文法で定着しているので、英語にはない漢文特有の文型を2つ追加して、むりやり5つにまとめてしまいましょう。すなわち

 

1.主語+述語
2.主語+述語+目的語
3.(目的語+)述語+主語のように思えるもの
4.主語+述語+目的語+目的語
5.述語が複数ある文(連動文や兼語文)

 

実質的には1と2と4だけでもいいが、3と5を追加して漢文を五文型にしてみた。

 

 後述のように漢文では動詞ばかりか形容詞も名詞も述語になることができるので「動詞」ではなく「述語」という言い方にしました。白文を読むコツは、まず述語がどこなのかを見破ることです。次に、述語の次に目的語があるかないか、あるとすれば1つなのか2つなのかを見破ります。そうすれば文の終わりを判断でき、句読点を打つ位置がわかるというわけです。

 

【1】主語+述語

 

1.王 wǎng xī 王喜ぶ
 [訳]王は喜んだ。
2.國山河 guó pò shānhé zài 國破れて山河在り
 [訳]国都は破壊されたが山や河はそのまま残っている。
3.山 shān gāo shuǐ shēn 山高く水深し
 [訳]山は高いし川は深い(旅路が困難なこと)。
4.國 guó zhì 國治まる
 [訳]国は安定している
5.農天下之本 nóng tiānxià zhī běn 農は天下の本[もと]なり
 [訳]農業は国の基本である
6.王勃子安太原人 Wáng Bó, zì Zǐ’ān, Tàiyuán rén.  王勃[わうぼつ]、字[あざな]は子安[しあん]、太原[たいげん]の人なり
 [訳]王勃は字(=実名以外の呼び名)は子安であり、太原の出身である。

 

【2】主語+述語+目的語

 

 
1.妻 rù shì jiàn qī 室に入りて妻を見る
 [訳]部屋に入って妻を見る。
2.畫 gōng shū shàn huà 書に工[たくみ]にして畫[ぐわ]を善くす
 [訳]書道がうまく絵も得意である。
3.東門 chū dōngmén 東門より出づ
 [訳]東口から出る。
4.病 xiè bìng 病[やまひ]と謝す
 [訳]病気だといって断る。
5.我趙將 wǒ wéi Zhào jiàng 我趙の將たり [訳]私は趙の将軍である。

 

【3】(目的語+)述語+主語のように思えるもの

 

1.容貌飢色 róngmào yǒu jīsè 容貌に飢色有り
 [訳]外見には飢えている様子がある。
2.曠人居亦稲田蔬圃 kuàng wú rénjū yì wú dàotián shūpǔ 曠[くわう]として人居無く亦[また]稲田[たうでん]蔬圃[そほ]無し
 [訳]殺風景で人家もなければ水田も野菜畑もない。
3.世伯楽、然後千里馬。千里馬常、而伯楽不常
shì yǒu bólè, ránhòu yǒu qiānlǐmǎ. qiānlǐmǎ cháng yǒu, ér bólè bù cháng yǒu.
世に伯楽有り、然る後に千里馬有り。千里馬は常に有れども、伯楽は常には有らず。
[訳]世の中には馬を見分ける名人がいてこそ、一日に千里を走る名馬が存在するのである。そういう名馬は常に存在するのだが、馬を見分ける名人はいつもいるわけではない。

 

【4】主語+述語+目的語+目的語

 

1.堯舜天下 yáo ràng shùn tiānxià 堯舜に天下を讓る
 [訳]堯(君主名)は舜(君主名)に天下を讓った。
2.逢羿射 Féngméng xué Yì shè 逢蒙[ほうもう]は射を羿[げい]に學ぶ
 [訳]逢蒙は弓を羿から学んだ。
3.徳才謂之君子 dé shèng cái wèi zhī jūnzǐ 徳の才に勝る、之を君子と謂ふ
 [訳]人徳が才能に勝っている人のことを君子という。
4.堯天下於舜 yáo ràng tiānxià yú shùn 堯天下を舜に讓る
 [訳]堯(人名)は天下を舜(人名)に讓った。
5.景公政孔子 Jǐnggōng wèn zhèng Kǒngzǐ 景公は政を孔子に問ふ
 [訳]景公(人名)は孔子(人名)に政治について質問した。
6.人於全 zé rén yú quán 人に全[まつた]きを責む
 [訳]人に完全さを求める。
7.舟江湖 chéng zhōu jiānghú 舟に江湖に乘る
 [訳]川や湖で舟に乗る。
8.弟子書 dú dìzǐ shū 弟子に書を讀ましむ [訳]弟子に書物を読ませる。

 

 【5-1】述語が複数ある文・1 連動文

 

樂正子春堂而其足數月不憂色
Yuèzhèng Zǐchūn xià táng ér shāng qí zǔ shù yuè bù chū yóu yǒu yōusè.
樂正子春堂より下りて其の足を傷つけ數月出でず猶憂色有り。[訳]樂正子春(人名。「樂正」が姓)は表座敷から下りるときに足を傷つけ、数ヵ月外出せず、まだ憔悴した様子であった。
 

 

【5-2】述語が複数ある文・2 兼語文

 

 1.朋自遠方來 yǒu péng zì yuǎnfāng lái 朋[とも]の遠方より來[きた]る有り
[訳]ある友達が遠方からやってきた。
2.使弟子書 shǐ dìzǐ dú shū 弟子をして書を讀ましむ [訳]弟子に書物を読ませる。

 

引用以上

 

一段進んだ学習をしたい人は:現代中国語で動詞を把握する訓練をして漢文を(白文)を前から読む

 

上記は、漢文について紹介していますが、多くの人が証言するように、実は現代中国語を本格的に勉強すると、その副作用として漢文もすらすら読めるようになってきます。何故なら、漢文は所謂古典漢語=昔話されていた中国語で、発音は変化していても、基本的な構文は変わらないからです。勿論、中国語の古典的な表現は現代中国語にも随所に残されています。また、(実践的な会話のために)現代中国語や英語を前から読んで理解するような能力は、全ての外国語、時代を通じて外国語による会話の為に身に付けるべき共通のノウハウです。古典漢語(漢文)であれば、現代中国語を身に付けた人が、後はピンインを振って古い単語の意味を調べるだけのことなので、(スラスラ漢文も読めるようになるのは)当然と言えば当然のことなのです。実際に、中国人が漢文に相当する古典漢語を研究する際には(レ点や返り点などは勿論振らずに)、前から読んでいきます。そう聞くと、遠い世界の話と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、実は日本人は古来から、立派にお経(古典漢語)を読んできています。日本で生活をしていれば、葬式の機会等を通じて、お経を聞いたことも多々あるはずです。ただ、お経を漢文と言わないだけで、お経も実際にはは中国語の一種であり、主語+動詞、がちゃんと有ります。(関心のある方は漢文(お経)を英語のように読む:般若心経にピンインを付けてみた:お経も実は漢文であって動詞がちゃんとあるということを参照。)こうしたことを念頭に入れておくと、違った角度で中国語や漢文を見ることが出来るようになります。

 

動詞が分かれば漢文も分かる事例:赤字部分が動詞。

 

舜天下 yáo ràng shùn tiānxià 堯舜に天下を讓る
[訳]堯(君主名)は舜(君主名)に天下を讓った。
山河 guó pò shānhé zài 國破れて山河在り
[訳]国都は破壊されたが山や河はそのまま残っている。
己,百;不彼而知己,一;不彼不己,每gù yuē : zhī bǐ zhījǐ, bǎi zhàn bù dài ; bùzhī bǐ ér zhījǐ , yī shèng yī fù ; bùzhī bǐ bùzhī jǐ , měi zhàn bì bài 。
[訳]故に曰く、彼を知りて己(おのれ)を知らば、百戦して殆(あやう)からず、彼を知らずして己を知らば一勝一負(いっしょういっぷ)す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎(ごと)に必ず敗る。
 

 

 

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