※本記事の内容は2021/9/24記事「誤用から学ぶ中国語」は中級者以上の方に学習効果抜群!HSK5級or中検2級レベルの方は必須!にてアップデート、補足説明をしておりますので、そちらも併せてご覧下さい!
今回は中国語中級者から上級者にステップアップしたい方向けの記事となります。本ブログでは中国語を初めて勉強する人の為の初級者向けの文法参考書についても既に紹介しております。以下の記事が難しそうだと感じる方は、別記事学習効果が高い中国語教材おすすめランキング:文法教材篇 中国語文法の教科書は音声CDが充実したこの教材で決まり!をまずはご確認下さい。
以下、ぶっちゃけ神速中国語講座執筆者の石風呂貴一さんから、中国語学習者の中級者以上であれば誰もが手に取る可能性がある定番の参考書「誤用から学ぶ中国語(白帝社)」の使い方について文章をご寄稿頂きました。いざ中国語の学習が進んで来ると、どうしても今までの参考書や経験だけでは解決できない課題に直面している人も多いのではないでしょうか?語学という性質上、どうしても実践経験が必要であり、折角参考書を手にしても、おい!その参考書自体がよく分からんな。。。という状況に陥ることも。やはり石風呂さんのように、実際に留学経験を持ち、現地で実践しながら鍛えた方の意見は貴重ではないかと思っております。では以下をまずご一読下さい!
中級者以上の学習者が日本語的な発想から脱却し、中国語脳でよりロジカルに知識を固める上ではこの上ない良書
皆さん、こんにちは!『ぶっちゃけ神速中国語講座』の著者、石風呂貴一(いしふろきいち)と申します。
今回は、中国語学習者が一度は耳にしたことがあるはずの参考書、『誤用から学ぶ中国語』シリーズの使い方についてシェアしたいと思います!
『誤用から学ぶ中国語』シリーズの概要・特徴
まずは、『誤用から学ぶ中国語』の概要について簡単にまとめてみました。
『誤用から学ぶ中国語』 |
出版社:白帝社 |
著者:郭春貴(かく はるき) |
第一弾:基礎から応用まで 発売日:2001年11月5日初版 |
第二弾:続編1 補語と副詞を中心に 発売日:2014年6月24日初版 |
第三弾:続編2 助動詞、介詞、数量詞を中心に 発売日:2017年2月15日初版 |
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『誤用から学ぶ中国語』は、2001年当時に広島修道大学経済学部にて教鞭を執っていた郭春貴(かく はるき)氏によって、第一弾となる『基礎から応用まで』が執筆され、白帝社より出版されました。
その後、様々な反響を得たのちに、2014年6月に待望の第二弾『続編1 補語と副詞を中心に』、そして2017年2月に第三弾『続編2 助動詞、介詞、数量詞を中心に』が発売されました。
当該シリーズは、タイトルの通り日本人が中国語を学習する上でありがちな『誤用』のタイプを、比較・分析→解説→理解!!のサイクルで改善していくことを目的としています。
例えば、第一弾では『能願動詞の“会”“能”“可以”の違い』『“这本书好”はなぜよくないか』、第二弾では『“只一个人”はいけないか ——“只”“只有”“只是”』・・・といったテーマが設定されています。郭氏の言葉をそのまま引用すると・・・
『「習慣」の一言で解決してしまうのはあまりに短絡的』
・・・と言うべき中国語文法の疑問の数々について、努めて論理的に解説を加えていくスタイルが採られています。
「何となく感覚ではわかっていても、それを筋道立てて説明するとなると・・・」
という痒い所に手が届くのが当該シリーズの最大の持ち味です。
以上のような性質から、当該シリーズは中国語文法を一通り学習し、基礎を終えた後になって初めて理解できる内容となっているため、最低でもHSK5級或いは中検2級レベルに到達している人が手にすべき参考書であると言えるでしょう。
効果的な使い方1【日本語では理解できない理屈を調べる】
では、具体的にどのような使い方をするのが効果的なのでしょうか?
当該シリーズはQ&Aの形式を取っており、レイアウトも極めてシンプルで、毎単元がせいぜい3~4ページ程度(最長でも8ページほど)の短いボリュームで次々と進んでいきます。
決して問題集ではないため、1ページ目から順番に読んでいくのはオススメしません。オススメする使用方法は、
辞書と同様に知りたいテーマがあった時に目次から検索し、該当部分を見つけたら理解するまで熟読することです。
中でも当該シリーズは、【日本語では理解できない理屈を調べる】【類似例から用法を比較する】の2点においてその強みを発揮します!
今回は、この2点を例として、当該シリーズの使い方を実践してみましょう!
まず、【日本語では理解できない理屈を調べる】は、「日本語で訳せば何となく正しい答えだと感じるのに、実は中国語文法では不正解」という性質のモノについて、この本の力を借りて体系的に理解し自分のモノとする方法です。
例として、第一弾『基礎から応用まで』の第28課『“一个学生在教室里”はなぜいけないのか』を見てみましょう。まずは次の写真からご覧ください。
(『誤用から学ぶ中国語 基礎から応用まで』P89より引用)
(『誤用から学ぶ中国語 基礎から応用まで』P90より引用)
P89より引用:
日本語で「1人の学生が教室の中にいる」は特におかしくはありませんが、中国語で“一个学生在教室里”と訳すと、ちょっと不自然な中国語になります。
上記のような導入から、本書は誤用例を3つ、正答例を3つ挙げて、その文法の理屈について解説していきます。
P89より引用:
(1)(2)(3)の主語は「数量詞+名詞」(“两位老师”“一个女孩儿”“两本书”)、(4)(5)(6)の主語は固有名詞か「指示代詞+名詞」(“小王”“那个女孩儿”“那两本书”)です。「数量詞+名詞」は一般のものに過ぎず、特定ではないのに対して、固有名詞と「指示代詞+名詞」は特定のものです。つまり、中国語の「主語+“在”+場所詞」という文型の主語は特定のものでないと、成立しにくいのです。
この解説の後、次ページ(P90)にて「中国語は古い情報(話し手と聞き手によって既知の情報)を主語の位置に、新しい情報を目的語の位置に置く傾向があります」と、中国語の「習慣」に相当するであろう規則に努めて論理的な解説を加えます。そして、
- 特定主語+“在”+場所詞
- 場所詞+“有”+数量詞+名詞
・・・の上記2種類の文型を覚えてください、と解決方法を提案し、最後に練習問題に移るのです。
『中国語の「主語+“在”+場所詞」という文型の主語は成立しにくい。』
↓
『古い情報を主語の位置に、新しい情報を目的語の位置に置く傾向がある。』
上述の理屈は、恐らくHSK5級或いは中検2級程度の実力があれば、一度言われさえすれば「何となく」は理解できるくらいの難度かもしれません。
しかし、これは冒頭の言葉通り中国語の「習慣」的なものであることから、日本語ネイティブの我々が日本語的な思考パターンから脱却し、かつゼロから自分の言葉で他人でも分かるように説明するのは至難の業です。
この単元で言えば、『中国語において「数量詞+名詞」という形を取るものは名詞全般または抽象的なものを指すため、話題の対象を限定する言い方としては不適当である』ということを、上述の規則・原因に当たる文章から読解→思考→理解(発見)し、かつ言語化しなくてはなりません。
また、上述の古い情報・新しい情報という文言が必ずしも時系列のみを指すわけではなく、
- 古い情報≒前提条件(原因)
- 新しい情報≒追加情報(後付け・結果)
と置き換えることもできる、ということに気付く必要もあります。これらは本書の解説『だけ』を脳内にコピペしただけでは直ちに理解できない、物事の『真髄』に当たる部分です。
当該シリーズは、解説が簡略化されていることもあるため、これ1冊のみで全てを完璧に理解できる!!というにはややハードルが高いと言えるかもしれません。しかし、文法の基礎を習得済みの学習者が思考のきっかけとして活用するには、この上ない『工具書』となること間違いなしです。
かくいう私もよく
「日本語では~~と言うから、中国語でもつい~~と使ってしまいたくなる!!(だってその方がしっくりくるんだもん!!)」
というタイプの質問またはお悩み相談を受けますが、このタイプの多くは要約すると
「(日本語で考えると)何となくいいと思うんだけど・・・・ダメ?」
・・・という日本語脳による思考が原因と言えるでしょう。
当該シリーズは、日本人がやってしまう『誤用』について中国語脳で考える癖付けを促すのに最適であり、
日本語ベースの感覚による誤用→中国語ベースのロジックある正答
・・・への意識改革を促すのが著者の最終目的だと私は思っています。
効果的な使い方2【類似例から用法を比較する】
もう一つの使い方としては、【類似例から用法を比較する】ことです。
当該シリーズは、毎編必ず「AとBの違いは?」「Cという介詞の用法について」という類似単語・文法の比較をテーマとした単元が数多く組まれています。
例えば、第一弾の第65・66・67課はそれぞれ『“把”の用法』①②③、第二弾の第48課『“在”と“有”の違い』・・・のように、頻出かつ重要な単元であるにも関わらず、『誤用』が多いモノについて論理的な解説を加えています。
「比較するなら辞書でも引くか、ネットで調べりゃそれぐらい出るだろ・・・・・」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、辞書は情報の豊富さ故に、最初から最後まで読まないと本質にたどり着けないという欠点もあります。
ある決まったテーマを調べる場合に限っては、辞書では却って調べるスピードが大幅に遅れたり、「あれもこれも気になった」結果、元々の問題からずれた答えを見つけてしまう恐れもあるのです。
『誤用から学ぶ中国語』シリーズは、学習者が一度はぶち当たるであろう問題について、ほぼ完璧に網羅しているため、イチから調べる手間を大幅にカットできます!
ここでは、第二弾の第48課『“在”と“有”の違い』を例に用法の比較をマスターする使い方を見ていきましょう!
(『誤用から学ぶ中国語 続編1 補語と副詞を中心に』P285より引用)
P285より引用:
所有の“有”(持っている)はあまり間違いがありませんので、この課では存在を表す“在”と“有”の用法を考えたいと思います。
この単元では、誤用が大変多い存在を表す“在”と“有”にスポットを当てて、まず5つの誤文を列挙した上で基礎から解説を加えています。
“在”と“有”は、本書でも述べられているように「・・・は・・・にある/いる」は“在”、「・・・に・・・がある/いる」は“有”を使うと教えています。という前提を述べたうえで・・・
- 特定の人と物の存在は“在”を使う。
- 不特定の人や物の存在は“有”を使う。
- 場所を尋ねる時、答える時は“在”を使う。
・・・と3種の違いについて比較しています。辞書ではいちいちゼロから列挙しなくてはならないことについて、瞬時に比較・確認できることも当該シリーズの美点の1つです。
話を元に戻すと、この単元では最後に最重要ポイントとして・・・
- “在”と“有”どちらを使うか。
・・・というテーマで、冒頭に列挙した5つの誤文について、いよいよ正答へと直す作業が始まります。
(『誤用から学ぶ中国語 続編1 補語と副詞を中心に』P287より引用)
(『誤用から学ぶ中国語 続編1 補語と副詞を中心に』P288より引用)
(『誤用から学ぶ中国語 続編1 補語と副詞を中心に』P289より引用)
中でも注目してほしいのは、P285の5番目の誤文・・・
(5) この本は図書館にありますか?
※这本书有图书馆吗?
※这本书在图书馆吗?
という“在”と“有”のどちらもが「誤用」である場合です。
P289より引用:
“这本书”は特定の物なのに、なぜ“在”を使えないのでしょうか。実は、よく考えてみると「この本は図書館にありますか」は、そのタイトルの本という意味だと思います。タイトルが同じ本なら、たくさんあるので、特定の物ではないのです。したがって、場所を主語にして、“有”を使います。次のように直せばいいですね。
(5a) 图书馆有这本书吗? Tú shū guǎn yǒu zhè běn shū ma?
これは、実は【日本語では理解できない理屈を調べる】のタームで引用した・・・
『古い情報を主語の位置に、新しい情報を目的語の位置に置く傾向がある。』
- 古い情報≒前提条件(原因)
- 新しい情報≒追加情報(後付け・結果)
・・・という中国語特有の文法論理≒(or≠)習慣に則って考えると、
- 图书馆=前提条件
- 这本书=追加情報・結果
・・・と理解することができ、上述の正答に辿り着けるようになっています。
繰り返しになりますが、この単元でも著者が「日本語の語順に惑わされないで」と強調しているように、類似例の比較に際しても、日本語の語感ではなく中国語脳で考えることが中国語文法習得の早道です。当該シリーズは、既に一度学んだ事項に関しても、中国語脳に置き換えて知識をより強固にするトレーニングとしても活用可能です。
まとめ
『誤用から学ぶ中国語』シリーズは日本国内では非常に知名度も高く、中国語学習者であれば一度は耳にしたことがあるはず。しかし、基礎を固める文法書として使用した場合、実力不足から内容についていけず挫折してしまうかもしれません。
しかしながら、当該シリーズは中級者以上の学習者が日本語的な発想から脱却し、中国語脳でよりロジカルに知識を固める上ではこの上ない良書であると言えるでしょう。
初心者向けの教材にするには即効性がないながらも、中国語学習参考書としては嚙めば嚙むほど味が出る、そんな作りである故に、初版から20年経った現在でも多くのユーザーに愛されるロングセラーとなっている傑作だと位置付けることができるでしょう。
私も当該シリーズには非常にお世話になっているので大変オススメです!皆さんも第一関門を突破したら、満を持して当該シリーズに足を踏みいれ、文法マスターとなりましょう!!!(^^)!
注:本記事の内容は2021/9/24記事「誤用から学ぶ中国語」は中級者以上の方に学習効果抜群!HSK5級or中検2級レベルの方は必須!にてアップデート、補足説明をしておりますので、そちらも併せてご覧下さい!
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