今回は、お経(般若心経)にピンインを振ってみました。お経にピンインを付けようと至った理由は、親戚に真言宗の僧侶もおり、毎日一応般若心経を唱えている父親と、昔した奇妙な会話がきっかけです。本ブログ運営者「お経も実は漢文でちゃんと主語と述語があるんだよ」父親「ん?????!本当か?」

 

多くの人が誤解していますが、実は、お経は古典漢語(古代の中国語=昔使用されていた中国語)であって、本来は漢文として読まれるべき(つまり主語+述語、動詞の構造がある)ものです。しかし、お経はそのまま語順通り読むことで、韻やリズムを含めて再現され有り難みが増すということで、慣習として前からそのまま読んでいきます。勿論、空海のような天才は唐の時代の中国語を完全に理解していましたし、ずっと下って江戸時代の有名な儒学者・思想家・文献学者である荻生徂徠も、「漢文は前から読むべし、中国語と同じ発音で読むべし、漢文訓読法を廃止すべし」、ということで唐通事(とうつうじ)から中国語(当時の長崎に来ていた貿易に従事する清国商人が話す南方方言で、現在の普通語とは異なる中国語)を勉強していたとか。それでも、今とは違ってiPhoneもタブレットや録音機材もなく、一部の限られた人だけが国際交流をしていた時代が長く続いた日本では、やはり語順を変えて日本語として読む訓読法が廃れることはなかったという状況です。※調べてみた所、空海の時代には音博士という役職の人がいて(音道という発音を学ぶ学科があって)、中国語の発音を教えている人がいたようです。空海以外にも中国語を喋れる人がいたのでその人達から中国語を学んでいたと思われます。

 

◆参考資料

杜甫の「春望」の古代唐音の再現(推定)

杜甫の「春望」の現代北京音:普通語の発音

 

我々が学校で習ったことがある漢文とは、ひと味違う漢文(つまり漢文訓読法が発明される前の日本人の漢文理解)を知る、という意味で、宗派を超えて、しかも外国人にもよく読まれている般若心経を中国語として読んでみるのは、新鮮な体験になると思います。(勿論、空海の時代の発音;中国の唐朝で話されていた発音=漢音と、現代中国語の発音は全く異なります。念のため。)

 

本ブログでは、英語、中国語、漢文は同時に勉強をするべき(その方が効率がいい)との運営方針であり、白文と書下し文と発音とを比較することによって、漢文の理解力、中国語の発音の聞取り能力、ひいては現代中国語の理解力も高まるのではないかと考えています。尚、今回取上げた般若心経(サンスクリット語:Maha Prajna Paramita Hrdaya Sutra, 英語:The Heart Sutra)は深い意味を持つ経典であり奥が深く、立ち入った解説は致しませんので、興味のある方は他のサイトをご参照下さい。また、動詞が分かると現代中国語、漢文を問わず中国語の理解力が格段に高まります。学習効果が高い中国語教材おすすめランキング:中国語学習で迷ったらこれを買おう!初級・中級者篇漢文にも5文型理論があった!漢文と現代中国語の繋がりをご確認頂ければ幸いです。※最初の2行だけ動詞相当部分を赤字としております。動詞に限らず形容詞部分も、実際には主語と述語の関係が成り立っている(例:色不异空,空不异色)のが分かると思います。要はS+Vの形式で大体読めるということです。お経を文法で見る習慣がないので、「お経みたい」という言葉の通り、一般の人にとってはチンプンカンプンな言葉の象徴となっているのでしょう。調べてみると「般若心経は英語で読むとよくわかる」という本まで出ているようです。

 

◆参考資料

摩诃般若波罗蜜多心经(百度百科)

般若心経(wikipedia)

 

◆簡体字原文及び発音(現代中国語)

https://v.qq.com/x/page/d0370yo07zs.html (腾讯)

https://www.youtube.com/watch?v=Snu9X64CE2E&amp(youtube)

 

◆読経(日本語)

https://www.youtube.com/watch?v=JOSmVw6-Ems(youtube)

 

◆注意:古典中国語ですので、読み方が現代中国語の漢字と読み方が異なる所があります。

若:ruò → rě

※般若心経の場合は2通りの読み方あります。

 

【般若波罗蜜多心经】

 

自在菩萨,深般若波罗蜜多时,照见五蕴皆空,一切苦厄。

 

bōrěbōluómìduōxīnjīng

guān zì zài púsà , xíng shēn bō rě bō luó mì duō shí,zhào jiàn wǔ yùn jiē kōng, dù yī qiē kǔ è。

 

観自在菩薩(カンジサイボサツ)ハ深般若波羅蜜多(ジンハンニャハラミッタ)ヲ行(ギョウ)ゼシ時、五蘊(ゴウン)皆空(カイクウ)ト照見(ショウケン)シ、一切ノ苦厄(クヤク)ヲ度(ド)シタマエリ。

 

舍利子,色不异空,空不异色,色即空,空即色,受想行识亦复如是。

 

shèlìzǐ, sè bù yì kōng ,kōng bù yì sè , sè jí shì kōng , kōng jí shì sè。shòu xiǎng xíng shí,yì fù rúshì。

 

舎利子(シャリシ)ヨ、色(シキ)ハ空(クウ)ニ異(コト)ナラズ、空ハ色ニ異ナラズ。色ハ即チ是レ空、空ハ即チ是レ色。受(ジュ)、想(ソウ)、(ギョウ)、識(シキ)亦(モ)復(マタ)是(カ)クノ如(ゴト)シ。

 

舍利子,是诸法空相,不生不灭,不垢不净,不增不减。

 

shèlìzǐ, shì zhūfǎ kōngxiāng, bù shēng bù miè, bù gòu bù jìng, bù zēng bù jiǎn ,

 

舎利子ヨ、是(コ)レ諸法(ショホウ)ハ空相(クウソウ)ニシテ、生ゼズ滅セズ、垢(ク)ナラズ浄(ジョウ)ナラズ、増ゼス減ゼズ。

 

是故空中无色,无受想行识,无眼耳鼻舌身意,无色声香味触法,无眼界乃至无意识界,

 

shì gù kōng zhōng wú sè, wú shòu xiǎng xíng shí, wú yǎn ěr bí shé shēn yì, wú sè shēng xiāng wèi chù fǎ, wú yǎnjiè nǎizhì wú yìshíjiè,

 

是(コ)ノ故(ユエ)、空(クウ)ノ中二色(シキ)無ク、受、想、識モ無ク。(ゲン)、耳(ニ)、鼻(ビ)、舌(ゼツ)、身(シン)、意(イ)無ク、色(シキ)、声(ショウ)、香(コウ)、(ミ)、触(ソク)、法(ホウ)モ無シ。眼界(ゲンカイ)無ク、乃至(ナイシ)意識界無シ。

 

无无明亦无无明尽,乃至无老死,亦无老死尽,无苦集灭道,无智亦无得。 以无所得故,

 

wú wúmíng , yì wú wúmíng jìn, nǎi zhì wú lǎosǐ, yì wú lǎosǐ jìn。wú kǔ jí miè dào, wú zhì yì wú dé, yǐ wú suǒ dé gù。

 

無明(ムミョウ)モ無ク、亦(マタ)無明(ムミョウ)尽キルコト無シ。乃至老死無ク、亦老死ノ尽キルコト無シ。苦(ク)、集(シュウ)、滅(メツ)、道(ドウ)無ク、智(チ)モ無ク亦得(トク)モ無シ。得ル所無キヲ以(モッ)テ故(ユエ)。 。

 

菩提萨埵。依般若波罗蜜多故,心无挂碍;无挂碍故,无有恐怖,远离颠倒梦想,究竟涅槃。三世诸佛,依般若波罗蜜多故,得阿耨多罗三藐三菩提。

 

pútísàduǒ yī bōrěbōluómìduō gù xīn wú guàài。wú guàài gù, wú yǒu kǒngbù, yuǎnlí diāndǎo mèngxiǎng, jiūjìng nièpán。sānshì zhūfó, yī bōrěbōluómìduō gù, dé ānuòduōluósānmiǎosānpútí。

 

菩提薩埵(ボダイサッタ)、般若波羅蜜多(ハンニャハラミッタ)ニ依(ヨ)ル故(ユエ)、心(シン)罣礙(ケイゲ)無ク、罣礙無キ故、恐怖(クフ)有ルコト無シ。一切(イッサイ)ノ顚倒夢想(テンドウムソウ)ヲ遠離(オンリ)シテ、涅槃(ネハン)ヲ究竟(クキョウ)ス。三世諸仏(サンゼショブツ)、般若波羅蜜多ニ依ル故、阿耨多羅三藐三菩提(アノクタラサンミャクサンボダイ)ヲ得タマエリ。

 

故知般若波罗蜜多,是大神咒,是大明咒,是无上咒,是无等等咒,能除一切苦,真实不虚。故说般若波罗蜜多咒,即说咒曰:揭谛揭谛,波罗揭谛,波罗僧揭谛,菩提萨婆诃。

 

gù zhī bōrěbōluómìduō, shì dà shénzhòu, shì dà míngzhòu,shì wú shàngzhòu, shì wú děngděngzhòu。néng chú yīqiē kǔ, zhēnshí bù xū。gù shuō bōrěbōluómìduō zhòu。jí shuō zhòu yuē:jiēdì jiēdì, bōluójiēdì, bōluósēngjiēdì, pútísàpóhē。

 

故(ユエ)ニ知ルべシ、般若波羅蜜多、是(コ)レ大(ダイ)ナル神呪(シンシュ)、是レ大ナル明呪(ミョウシュ)、是レ無上(ムジョウ)ノ呪(シュ)、是レ等等(トウドウ)無キ呪。能(ヨ)く一切ノ苦ヲ除キ、真実ニシテ虚(コ)ナラズ。故ニ般若波羅蜜多ノ呪ヲ説(ト)ク。即チ、呪ヲ説イテ曰(イワ)く、羯諦羯諦(ギャアテイギャアテイ)、波羅羯諦(ハラギャアテイ)波羅僧羯諦(ハラソウギャアテイ)、菩提薩婆訶(ボジソワカ)。般若心経 。

 

【参考資料】

 

上記wikipediaによると新字体の般若心経で我々が日本で最もよく目にするものは以下のテキストです。(読み方も末尾に記載しました。)勿論、実際のお経は句読点や区切りが全く無いので読みにくいことこの上ありませんね。

 

仏説・摩訶般若波羅蜜多心経
観自在菩薩・行深般若波羅蜜多時、照見五蘊皆空、度一切苦厄。舎利子。色不異空、空不異色、色即是空、空即是色。受・想・行・識・亦復如是。舎利子。是諸法空相、不生不滅、不垢不浄、不増不減。是故空中、無色、無受・想・行・識、無眼・耳・鼻・舌・身・意、無色・声・香・味・触・法。無眼界、乃至、無意識界。無無明・亦無無明尽、乃至、無老死、亦無老死尽。無苦・集・滅・道。無智、亦無得。以無所得故、菩提薩埵、依般若波羅蜜多故、心無罣礙、無罣礙故、無有恐怖、遠離・一切・顛倒夢想、究竟涅槃。三世諸仏、依般若波羅蜜多故、得阿耨多羅三藐三菩提。故知、般若波羅蜜多、是大神呪、是大明呪、是無上呪、是無等等呪、能除一切苦、真実不虚。故説、般若波羅蜜多呪。
即説呪曰、羯諦羯諦、波羅羯諦、波羅僧羯諦、菩提薩婆訶。般若心経。

 

ぶっせつまかはんにゃはらみたしんぎょう

かんじざいぼさつぎょうじんはんにゃはらみったじ しょうけんごうんかいくうどいっさいくやく  しゃりし しきふいくう くうふいしき しきそくぜくう くうそくぜしき じゅそうぎょうしきやくぶにょぜ  しゃりし ぜしょほうくうそう ふしょうふめつ ふくふじょう ふぞうふげん  ぜこくうちゅう むしき むじゅそうぎょうしき むげんにびぜっしんい むしきしょうこうみそくほう むげんかい ないしむいしきかい  むむみょう やくむむみょうじん ないしむろうし やくむろうしじん むくしゅうめつどう むちやくむとく いむしょとくこ  ぼだいさった えはんにゃはらみったこ しんむけいげ むけいげこ むうくふ おんりいっさいてんどうむそう くきょうねはん  さんぜしょぶつ えはんにゃはらみったこ とくあのくたらさんみゃくさんぼだい  こちはんにゃはらみった ぜだいじんしゅ ぜだいみょうしゅ ぜむじょうしゅ ぜむとうどうしゅ のうじょいっさいく しんじつふこ  こせつはんにゃはらみったしゅ そくせつしゅわつ
ぎゃていぎゃてい はらぎゃてい はらそうぎゃてい ぼじそわか はんにゃしんぎょう

 

 

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