「曹操の墓」博物館オープン記念!リーダーや名経営者にも通じる『三国志』の主君に関する成語や慣用句を国別で比較する

リーダーとの会話に欠かせない中国古典の知識を中国語で交わせる、デキる人へクラスチェンジ!!

曹操といえばご存知『三国志』の英雄、世界一の『三国志』大国である日本はもちろん、本家・中国でもリアリストな政治家として歴史愛好家の間でも抜群の人気を誇る人物です。

そんな曹操のお墓が、2023年に河南省安陽市で【曹操高陵遺跡博物館】として4月27日にオープンセレモニー、同29日に正式開館いたしました!!

参考記事:曹操高陵遺跡博物館がオープンセレモニー 河南・安陽 文化財488点(セット)を展示

(出典:抖音)

曹操の「墓」が発見されたのは2009年12月、それからしばらく経った2010年11月に、愛媛大学東アジア古代鉄文化研究センター(現・アジア古代産業考古学研究センター)の招待を受けた曹操の墓の発掘研究担当機関である河南省文物考古研究所が愛媛大学でシンポジウムを行いました。

運営者は当時、愛媛大学人文学科のアジア史専攻2回生、この知らせを聞いて飛んでシンポジウムに参加したことを鮮明に覚えています。

参考URL:東アジア古代鉄文化研究センター第3回国際シンポジウム『三国志・魏の世界―曹操高陵の発見とその意義―』

 

曹操高陵遺跡博物館では、曹操高陵から出土した貴重な文化財約400点余りが展示され、博物館はオープンに際して、【その場で曹操の詩を暗唱できたら無料で入場OKにする】というちょっとしたイベントも用意、中国の国営通信社・新華社ウェイボー(微博 wēi bó)にて広報を行っていました。

(出典:Weibo 新華社公式アカウント)

さて、曹操といえば『孫子略解』といった兵法書の注釈や、『曹操詩集』という詩のまとめ本が後世の学者によって編纂されるほど数多くの著作や詩文を遺した教養人であり、近年では冷酷で厳しいイメージとは裏腹に人間味溢れるストーリーが数多く紹介されるなど、引き続き注目を集めています。

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『三国志』は日本人にとっても、古くは奈良時代から人物評を用いて当代の政治や人物を評価する際に用いられました。

あの織田信長や徳川家康も、人物評や戦略には『三国志』を大いに参考にしていました。そして現代でも日本の経営者や起業家の多くは中国に由来する漢籍の愛読者で、産業革新機構CEO・志賀俊之氏の愛読書も『三国志』で知られています。

参考記事:志賀俊之「カルロス・ゴーンは曹操を目指した」

今回は、リーダーや名経営者との会話にも欠かせない、『三国志』の国ごとの主君や統治者が題材の故事成語や慣用句を紹介していきます!!

      曹魏:冷徹な統治者として

      まずは『三国志』の正統な主人公、曹魏から行きましょう!

      说曹操,曹操到 shuō cáo cāocáo cāo dào 噂をすれば影が差す

      说曹操,曹操到 shuō cáo cāocáo cāo dào は、「曹操の話をすると曹操がやって来る」=噂をすれば影が差すという意味です。

      こちらの出典は曹操自身が生きた後漢末期から約1200年経った明代の小説『三国志演義』です。

      後漢の献帝は董卓の勢力を引き継いだ李傕・郭汜の専横に悩み、曹操や袁紹といった外にいる勢力に助けを求めようと使者を送ろうとしていましたが、『演義』において曹操はこの事態を事前に予測し、献帝の使者が到着するよりも前に李傕・郭汜を倒してしまい、献帝の保護者としての立場をあっという間に確立することに成功したのです。

      『演義』においては、この曹操の迅速な対応を褒める意味で 说曹操,曹操到 shuō cáo cāocáo cāo dào を用いました。

      しかし、現代では「悪い噂はしないほうが良い」という意味に誤用されているケースが多いです。

      望梅止渴 wàng méi zhǐ kě 梅林を見て渇きを癒す、ただ空想するだけで満足する

      望梅止渴 wàng méi zhǐ kě は、「梅林を見て渇きを癒す」=空想に浸って満足するという意味です。

      こちらの出典は『三国志』の時代から200年後の南朝・劉宋の時代に編纂された文言小説集『世説新語(せせつしんご)』です。

      曹操が張繡(ちょうしゅう)の討伐に赴いた際に道に迷い、兵士一同がのどの渇きに見舞われた際に、曹操が「先の梅の林に多くの甘酸っぱい実がなっている」と皆に伝えて渇きを凌いだというエピソードがこの由来です。

      結局一時しのぎでしかないのですが、科学が未発達の1800年前においては、こうした曹操の帝王学は「機転が効く」「狡猾さ」として評価されたのです。

      各以所长,相轻所短 gè yǐ suǒ zhǎngxiāng qīng suǒ duǎn 自身の長所を頼みに、他人の欠点を指摘する

      各以所长,相轻所短 gè yǐ suǒ zhǎngxiāng qīng suǒ duǎn は、「自身の長所を頼みに、他人の欠点を指摘する」という意味です。

      「名人は人をそしらず」の対義語として使えるこの成語は、平たく言って【他人を見下す】という意味で使われます。

      出典は曹操の太子・曹丕(そうひ)が記した中国最古の文学評論『典論』ですが、そこで曹丕は「人々は自身の得意な部分ばかりが見えて、他人の不得手を見下す」と当時の文学者の問題点を指摘しています。

      曹丕も曹操に負けず劣らずの冷徹な指導者、そして文学者としての顔を持っていますが、一流の教養人であるからこそ見えてくる「当時の学者の腐敗」を指摘する鋭さが伺えます。

      孫呉:専横を極めた一族出身者から出た権勢ある言葉

      2番目はどうしても地味になりがち、でも実は主君を始め個性派の集まりである孫呉です。

      生子当如孙仲谋 shēng zǐ dāng rú sūn zhòng móu 息子を持つなら、まさに孫権のような息子がいい

      生子当如孙仲谋 shēng zǐ dāng rú sūn zhòng móu は、文字通り「息子を持つなら、まさに孫権のような息子がいい」という意味です。

      この出典は正史『三国志』の注釈です。

      孫権は曹操、劉備より二周りも年少で、当初は劉備や曹操に駆け引きで後れを取る時もありましたが、西暦212年の濡須口(じゅしゅこう)の戦いで自ら曹操の陣に進み敵軍を撃破し、堂々と撤退する様子を見て、曹操が「あれほど武勇に長けた若者は自分にはいない」と孫権を評価した際に述べたものです。

      (出典:コーエー三國志12)

      位极人臣 wèi jí rén chén 位人臣を極める

      位极人臣 wèi jí rén chén は文字通り「位人臣を極める=名実共に臣下として最高位に就く」という意味ですが、日本語でも有名なこの言葉、何と『三国志』が出典です。

      この言葉を用いたのは、孫呉後期の皇族出身の大将軍・孫綝(そんちん)です。

      (出典:コーエー三國志14)

      孫綝は自身の排斥を企んだ2代皇帝を廃位し、3代皇帝・孫休(そんきゅう)を都に迎え入れた際の上奏文にて、自身の栄達を謙遜する形で引退を願い出る際に 位极人臣 wèi jí rén chén を使いました。

      孫綝は権力を掌握する際に数多くの政敵を殺害し、かつこれ以降も専横を極めたために、結局のちに皇帝自身の策略によって殺害され、孫一族の系譜からも消されてしまいました。

      蜀漢:影が薄い主君とそれ以上に有名な宰相

      3番目は演義のヒーロー、正史のダークホース、劉備三兄弟の蜀漢です。

      放虎归山 fàng hǔ guī shān 災いを将来に残す

      放虎归山 fàng hǔ guī shān は、「災いを将来に残す」という意味です。

      この出典は西晋の司馬彪が編纂した『零陵先賢伝』という地方志です。

      小説やアニメの劉備は総じて頼りないイメージを持たれていますが、実際は複数の群雄を渡り歩き、やがて独立していった強かな英雄。実際、曹操をはじめ数々の群雄はあちこちで強敵を撃破する実力を有する劉備を恐れていました。

      のちに蜀漢という国の根拠地となる成都を治めていた劉璋(りゅうしょう)は敵対する張魯を討伐するために劉備の力を借りようと考え、臣下の法正(ほうせい)を劉備の下に派遣します。しかし、法正は最初から頼りない劉璋を見限って劉備を新たな国主として迎え入れる計画だったのです。

      それを知った臣下の劉巴(りゅうは)は、劉璋にその危険性を諌める際に次のように進言します。

      若使备讨张鲁,是放虎山林
      ruò shǐ bèi tǎo zhāng lǔshì fàng hǔ yú shān lín yě.
      訳:もし劉備に張魯を討たせてしまえば、虎が山へ帰ってしまいますぞ。

      実は劉備その人を題材にした中国語の成語は決して多くなく、劉備の主君としての側面を端的に表す成語はこれくらいなのです。

      そういう意味で、劉備は正史においてやや影が薄い存在であったからこそ、演義での創作の余地が多分にあったのだと言えるでしょう。

      鞠躬尽瘁,死而后已 jū gōng jìn cuìsǐ ér hòu yǐ 深く謹み、全身全霊で事業にあたり、最後まで力を尽くし、死んでのちようやく終わる

      鞠躬尽瘁,死而后已 jū gōng jìn cuìsǐ ér hòu yǐ は、深く謹み、全身全霊で事業にあたり、最後まで力を尽くし、死んでのちようやく終わる、という意味です。

      出典は東晋時代の書籍『漢晋春秋』です。

      第一次北伐に失敗し、馬謖や趙雲といった優秀な人材を失った諸葛亮、それでも諦めずに第二次北伐の軍を発する際に、皇帝劉禅に向けて上奏した文、所謂『後出師表』と言われる名文から拾われたフレーズです。

      この北伐の際に読まれたとされる『出師表』『後出師表』はいずれも名文とされ、諸葛亮が後世まで忠臣として知られる所以となったものですが、実は『後出師表』は出典の怪しさからホンモノかニセモノか?という議論がされています。

      三个臭皮匠顶个诸葛亮 sān gè chòu pí jiàng dǐng gè zhū gě liàng 3人寄れば文殊の知恵

      三个臭皮匠顶个诸葛亮 sān gè chòu pí jiàng dǐng gè zhū gě liàng は、「3人の皮職人が集まれば諸葛亮に匹敵する」=3人寄れば文殊の知恵という意味です。

      こちらは出典は不明ですが、民間伝承で伝えられていたことわざで、皮匠pí jiàng は元々 裨将 pí jiāng =副将、つまり3人の副将=1人の宰相(大将)という意味で、多くの人が叡智を集める意義について述べています。

      (出典:百度百科)

      ここでもわざわざ名前で取り上げられる諸葛亮、まさにパリピ孔明💦さすがは1800年経っても尊敬を集める存在なだけはありますね。

      西晋:つきまとう簒奪者の汚名

      最後は歴史上でも評判がイマイチ良くない三国時代の最後の勝者、西晋から。

      この国はズバリ、野心家のイメージがバッチリついています💦

      司马昭之心,路人皆知 sī mǎ zhāo zhī xīnlù rén jiē zhī 司馬昭の心は道行く人までみな知っている

      马昭之心,路人皆知 sī mǎ zhāo zhī xīnlù rén jiē zhī は、司馬昭の心は道行く人までみな知っている=野心家の考えは誰もが知っている、という意味です。

      出典は司馬一族の子孫が築いた東晋時代の書籍『漢晋春秋』です。

      司馬昭といえば、某ゲームでは「面倒くせぇ」が口癖で陽気なキャラとして描かれていますが、実際は野心丸出しで政敵を容赦なく消していく全然爽やかじゃない恐ろしい人物としてのイメージが強いです。

      司馬昭が兄から権力を引き継いでからというもの、曹魏の4代皇帝・曹髦(そうぼう)は司馬昭の自身に対する扱いの悪さや非礼にさらされてきましたが、聡明な曹髦はこの傀儡であり続ける自分に耐え切れず、ついに信頼できる臣下を誘って司馬昭討伐の計画を持ち掛けます。

       

      (出典:コーエー三國志14)

      その際に曹髦が臣下に発したのが「司马昭之心,路人皆知 sī mǎ zhāo zhī xīnlù rén jiē zhī 司馬昭の心は道行く人までみな知っている」でした。

      しかしこの計画は程なく司馬昭の知るところとなり、ついに曹髦は司馬昭の手下に殺害されてしまうのです。

      晋祚不长 jìn zuò bù cháng 晋の皇祚は長くは続くまい

      上記の通り、皇帝を弑した司馬昭の評判は極めて悪く、司馬昭の時代から60年ほど経った東晋時代になってその子孫が東晋を開いた後も悪影響を及ぼしています。

      東晋の2代皇帝・明帝司馬紹(しばしょう)は、即位後に王導という人物を重用します。ある日、王導に「司馬一族が天下を制した理由を教えよ」と聞いたところ、王導はかつて西晋建国の際に曹魏の皇帝を弑した歴史を語りました。

      これに対し、明帝は顔を覆って「晋祚不 jìn zuò bù cháng 晋の皇祚は長くは続くまい」と嘆いたと伝わります。

      (出典:康说历史人物)

      まとめ

      中国語を学ぶ際には、こうして歴史と成語を共に学んでいくことで、リーダーやゼネラル層の意識を身につけることも心掛けて見ると、あなたのエフィカシーもアップすること間違いありません!!

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