今回は、英語の速読方法を中心にお話をしたいと思います。勿論、中国語や日本語、その他の言語や受験にも応用可能な方法です。尚、本記事を書くにあたり、「英語は訳さず学べ! キンドル・iPad・iPhone対応 ドクター苫米地の次世代英語脳のつくり方(徳間書店 2010/9/16、苫米地英人) 」を参考にしました。著者は米国でもトップクラスの水準を誇るカーネギーメロン大学の計算機言語学の博士号を取得している方で、年間数千冊以上の原書を読破して理解しなければ卒業出来ない環境の中で、編み出した技術です。苫米地英人氏は英語の教材も作成している方です。

参考資料:学習効果が高い英語教材おすすめランキング:英語学習で迷ったらこれを買おう!ユニーク教材篇

 

【意外と知られているようで知られていない速読法:速読法は魔法ではない!キーワードリーディング、飛ばし読みはしないこと!】

 

速読というと、すぐにキーワードだけを拾い読みする方式や、飛ばし読みを頭に浮かべる方がいらっしゃるかもしれませんが、これは絶対に避けなければなりません。人間は、「既に理解しているものを素早く理解すること」しか出来ません。つまり、元となる知識があってこそ、速読が可能になるのであって、速読法を学べば魔法のように全てが読める訳ではありません。例えば、会計の知識がない人が「借方」「貸方」「繰延税金資産」と聞いても何のことだか分かりませんし、金融や経済のバックグラウンド、背景知識がない人が「ロング」「ショート」「タカ派」「ハト派」だと聞いても、美容院??ハト?金融と関係があるの?ぐらいにしか思えないことでしょう。これは勿論、英語についても同様で、例えばamendment, libertarian, Bill of Rights…等、よく報道で頻出するような単語に出くわしたとしても、歴史的な背景やその分野の予備知識がないと、何のことだかまるで分からないはずです。例えば中国語の新聞記事を読む場合には、三中全会、全人代といった政治用語の他に、日本語と中国語では意味が異なる漢字(例:約束、汽車…etc)や、”精力充沛”のような頻出する四字熟語等も頭に入れておく必要があります。※英語のidiomも同様です。”hair of the dog that bits you”等、米国人が頻繁に使うイディオムは必ず頭に入れておく必要があります。※芸能、映画ネタ、その他生活や天気についても、大抵はある程度の予備知識が必要で、それはどの言語も共通です。

 

結論は、速読には背景知識が前提として必要になるということです。絶対に飛ばし読みをせず、分からない所は、後で辞書を引いたり、ネットで調べておくようにしましょう。知識が蓄積されていない段階(初心者の段階)で単語やものごとを調べる事を怠ると、いつまでたっても速読は出来るようになりませんし、出来るように感じたとしても、自分で自分を誤魔化しているに過ぎません。結果、重要なポイントがどこにあるのか、判断する能力をいつまでも養うことが出来ず、悪循環です。

 

【英語の速読法:テクニックそのものは意外と簡単:今読んでいる行の先の行に目を置く】

 

英語(横文字)の速読法についてですが、特に難しいことはありません。視界に入る行数を決めて、縦に目線(視線)を下ろしていくだけです。この時、今読んでいる行の先の行(なるべく下の行)に目線を置くように意識します。最初は文字の大きさを大きく、(KindleやiPad等の電子書籍であれば字の大きさを変えることが出来ます。)スタートし、徐々に文字を小さくしていきましょう。注:速読は、迅速な内容把握が目的なので、特に音声や発音を頭の中で再現をする形式での黙読は必要はありません。頭のなかの発音を省略して意味を取るようにしましょう。

 

◆最初は三行程度が視界に入るようにします。真ん中に目線を置いて、読む行の一行先を見ながら下ろしていく感じです。例えば、1行目を読んでいる時には、2行目や3行目を視界に入れておくということです。実際には、一度に三行ぐらいは誰でも目に入ってくるはずです。

 

〇〇〇〇〇↓〇〇〇〇〇

〇〇〇〇<目>〇〇〇〇

〇〇〇〇〇↓〇〇〇〇〇

 

◆徐々に一度に目に入れる行数を増やし、出来れば1ページが丸ごと視界に入るまでトライします。半分ぐらいでも十分早く読めます。

 

〇〇〇〇〇↓〇〇〇〇〇

〇〇〇〇〇↓〇〇〇〇〇

〇〇〇〇〇↓〇〇〇〇〇

〇〇〇〇<目>〇〇〇〇

〇〇〇〇〇↓〇〇〇〇〇

〇〇〇〇〇↓〇〇〇〇〇

〇〇〇〇〇↓〇〇〇〇〇

 

◆次に文字を小さくして、一行あたりの文字数を増やしていきます。

 

〇〇〇〇〇〇〇〇〇↓〇〇〇〇〇〇〇〇〇

〇〇〇〇〇〇〇〇〇↓〇〇〇〇〇〇〇〇〇

〇〇〇〇〇〇〇〇〇↓〇〇〇〇〇〇〇〇〇

〇〇〇〇〇〇〇〇<目>〇〇〇〇〇〇〇〇

〇〇〇〇〇〇〇〇〇↓〇〇〇〇〇〇〇〇〇

〇〇〇〇〇〇〇〇〇↓〇〇〇〇〇〇〇〇〇

〇〇〇〇〇〇〇〇〇↓〇〇〇〇〇〇〇〇〇

 

実際の例を上掲書から見ていきましょう。(P174:題材はAdam SmithのThe Wealth of Nations

 

出典:上掲書P174

 

出典:上掲書P176

 

出典:上掲書P178

 

出典:上掲書P181 注:このケースでは4行目に視線を置き、5行目(一度に5行分)が同時に見えている。

 

出典:上掲書P184

 

【英語は古典や論文が意外と読みやすい】

 

速読の練習となる題材は、ある程度自分が背景知識を持っているもの(例えば金融の仕事に従事している方は、金融、エンジニアであれば技術関係、IT関係等)から始めるようにしましょう。また、新聞や、新聞の見出しを一瞬で把握する訓練も英語の速読の練習にはもってこいです。その他、英語の古典や論文は流行の言葉があまり入っておらず、文章としては長くとも、英文の構造は変わらないので左程難しいものではありません。中国語については、魯迅の時代のものについては、一応現代の中国人も読めるようです。書き言葉と話し言葉とのギャップはアジア共通の課題であり、日本語も中国語も、話し言葉に書き言葉が近付いたのがつい最近(19-20世紀)であったため、一層意外に感じてしまうかもしれませんが、上掲書に例として取上げられたアダム・スミスの文章(1776年に出版)を読んで頂ければ、英語は昔とあまり変化がないことが実感出来るのではないでしょうか?※中国語の長文読解については学習効果の高い中国語教材を実際に試してみる:主語+動詞を押さえれば間違いなし。やはり「【網野式】動詞フォーカス中国語入門」は役に立つ!をご参照下さい。

 

【最後に:小説は無理に速読しなくてもよい】

 

速読は優れた頭の訓練になることは確かですが、あくまでも、ビジネスや学習の必要に迫られてすることです。主に時間の捻出効果を狙ったものと考えてよいでしょう。その意味で、モーツアルトの音楽を早送りして聞く人がいないのと同様で、例えば、三島由紀夫や、スコット・フィッツジェラルドをわざわざ速読する意味はあまりないように思います。

 

【豆知識】

 

受験の為に、速読が必要な方は、一回で(問題文の)全てが把握出来なくても焦ることはありません。上述した速読を利用して、2回、3回と素早く読んでいく習慣を身に付けましょう。一回だけゆっくり黙読するよりも、遙かに理解度が高くなってくるのが感じられます。是非お試し下さい!

 

 

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